2023.12.04
意匠法の改正(令和5年改正)について【続】
みなさん、こんにちは。
「知財で日本を元気にする弁理士」の髙井智之です。
改正意匠法の施行日が「令和6年1月1日」に決まったとのことですので、ご紹介させて頂きたいと思います。
※特許庁の発表内容は、下記リンク↓をご覧ください。
意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について(出願前にデザインを公開した場合の手続について) | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
1.従来の新規性喪失の例外規定の適用手続と、そこに内在していた問題点
意匠法では、意匠登録を受ける権利を有する者(以下、「権利者」と言います)が意匠出願前に意匠を公開してしまった場合、その公開から1年以内であれば、新規性喪失の例外規定(以下、「例外規定」と言います)の適用を受けることにより、自らが行った公開を理由に拒絶されることはありません。
ところで、例外規定の適用を受けるためには、この適用の要件を満たしていることを証明する書面(以下、「証明書面」と言います)を提出する必要がありますが、今までは、権利者による意匠の公開が、別々の日時に、別々の場所・媒体で行われた場合、原則として、それぞれの公開について証明書面を提出する必要がありました。
例えば、20●●年4月1日に、展示会で、意匠Aを公開し、同年5月1日にYouTubeの動画で同じ意匠Aを公開した後、意匠Aについて例外規定の適用を受けて意匠出願したい場合、展示会における公開(4月1日)とYouTubeにおける公開(5月1日)それぞれについて証明書面を提出しなければなりませんでした。
このため、公開行為ごとに証明書面を提出しなければならないという手続の煩雑さもさることながら、つぎのような問題も起こり得ました。
すなわち、上記の例で言えば、展示会における公開(4月1日)については証明書面を提出したものの、YouTubeにおける公開(5月1日)については提出していなかった場合、YouTubeにおける公開については例外規定の適用を受けられず、特許庁の審査においてYouTube動画を引用されて「新規性なし」と判断され、拒絶される可能性があります。
企業において創作された意匠であれば、例えば広報部門等が自社のYouTubeチャンネルにて、その意匠に係る製品を公開し、かつ、その公開が開発部門や知財部門に情報共有されていなかった・・・というようなケースもあり得そうです。
2.今回の改正の概要
今回の改正によれば、権利者が意匠出願前に公開した意匠について、最先の公開日の公開行為について証明書面を提出することで、それ以後に公開した同一又は類似の意匠についても例外規定の適用を受けることができるようになります。
上記の例で言えば、展示会における公開(4月1日)について証明書面を提出すれば、YouTubeにおける公開(5月1日)については証明書面を提出しなくても、例外規定の適用を受けることができるようになります。
例外規定適用の要件が緩和されたことにより、公開行為ごとに証明書面を提出する手間や、一部の公開行為について証明書面を提出していなかったことによる拒絶のリスクが解消されるのではないかと思います。
今回ご報告させて頂いた改正法について詳しく知りたい、あるいは、私の取り組みにご興味をお持ち頂いたかたは、お手数ですが、弊所ホームページよりお問い合わせお願い致します。
カテゴリ:お知らせ
「知財で日本を元気にする弁理士」の髙井智之です。
改正意匠法の施行日が「令和6年1月1日」に決まったとのことですので、ご紹介させて頂きたいと思います。
※特許庁の発表内容は、下記リンク↓をご覧ください。
意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続について(出願前にデザインを公開した場合の手続について) | 経済産業省 特許庁 (jpo.go.jp)
1.従来の新規性喪失の例外規定の適用手続と、そこに内在していた問題点
意匠法では、意匠登録を受ける権利を有する者(以下、「権利者」と言います)が意匠出願前に意匠を公開してしまった場合、その公開から1年以内であれば、新規性喪失の例外規定(以下、「例外規定」と言います)の適用を受けることにより、自らが行った公開を理由に拒絶されることはありません。
ところで、例外規定の適用を受けるためには、この適用の要件を満たしていることを証明する書面(以下、「証明書面」と言います)を提出する必要がありますが、今までは、権利者による意匠の公開が、別々の日時に、別々の場所・媒体で行われた場合、原則として、それぞれの公開について証明書面を提出する必要がありました。
例えば、20●●年4月1日に、展示会で、意匠Aを公開し、同年5月1日にYouTubeの動画で同じ意匠Aを公開した後、意匠Aについて例外規定の適用を受けて意匠出願したい場合、展示会における公開(4月1日)とYouTubeにおける公開(5月1日)それぞれについて証明書面を提出しなければなりませんでした。
このため、公開行為ごとに証明書面を提出しなければならないという手続の煩雑さもさることながら、つぎのような問題も起こり得ました。
すなわち、上記の例で言えば、展示会における公開(4月1日)については証明書面を提出したものの、YouTubeにおける公開(5月1日)については提出していなかった場合、YouTubeにおける公開については例外規定の適用を受けられず、特許庁の審査においてYouTube動画を引用されて「新規性なし」と判断され、拒絶される可能性があります。
企業において創作された意匠であれば、例えば広報部門等が自社のYouTubeチャンネルにて、その意匠に係る製品を公開し、かつ、その公開が開発部門や知財部門に情報共有されていなかった・・・というようなケースもあり得そうです。
2.今回の改正の概要
今回の改正によれば、権利者が意匠出願前に公開した意匠について、最先の公開日の公開行為について証明書面を提出することで、それ以後に公開した同一又は類似の意匠についても例外規定の適用を受けることができるようになります。
上記の例で言えば、展示会における公開(4月1日)について証明書面を提出すれば、YouTubeにおける公開(5月1日)については証明書面を提出しなくても、例外規定の適用を受けることができるようになります。
例外規定適用の要件が緩和されたことにより、公開行為ごとに証明書面を提出する手間や、一部の公開行為について証明書面を提出していなかったことによる拒絶のリスクが解消されるのではないかと思います。
今回ご報告させて頂いた改正法について詳しく知りたい、あるいは、私の取り組みにご興味をお持ち頂いたかたは、お手数ですが、弊所ホームページよりお問い合わせお願い致します。